-第六回- Sep. 24, 2001

経済ってなかなかわかりづらい。とはいえ、Zephyr発行人としては、少しは世の中のことを理解しておきたい・・・ そこで、経験豊富、知識無尽蔵のさだやんを講師にお招きし、日頃から気になっていた疑問について、お答えいただきます。 -第一回-、-第二回-、-第三回-、-第四回-第五回、 -第七回-

Q::前代未聞の組織的テロ事件によって、いま、世界は足下から揺さぶられています。
インターネットをはじめ、メディアの発達によって、瞬時に情報が駆けめぐりますね。そのような中で世界恐慌への懸念があちらこちらで囁かれています。
米航空業界の損失が1兆円を超すとか、ニューヨーク株式市場が再開したものの大幅に下がった株価など、世界に及ぼす影響は計り知れないものがあるでしょう。

それはさておき、先日新聞のコラムに以下のような内容の記事がありました。
構造改革に譲歩は禁物だ

とても面白い、そして希望の持てる話ですが、さだやん先生はどうお考えですか。
A: こういった非常事態を 如何に自らに有利に展開するかは、まさに国の為政者の態度如何でしょうね。

テロがあろうとなかろうと、日本の基本的改革は現在の政局の不安定さからして、’外圧’に頼るしかないと思っております。

その意味では、言い方は悪いですが、今般の事件は、IMF視察団を受け入れずとも思い切って改革を実行する、絶好のチャンスではないかと考えます。
Q: この記事を読んで、私も同感だと思ったのは、例えば、不景気だ、大変だとメディアが騒ぎ立てる割りには、一時帰国で垣間見る日本にはまだまだ余裕がある様に見えるということです。ちょっと見方を変えれば、この時代に日本が大きく生まれ変わるきっかけが大いにあるのではないかと思っていました。

さだやん先生にとって、この記事に共感できる点はどんなところでしょう。
A: 次の三つの点でしょうね。
1) 現在はデフレではなく、過去めちゃくちゃであった日本の物価の正常化現象にすぎないこと。
   つまりスタグフレーションの最終段階なること
2) 現状、物価は大幅に下がったとはいえ、日本はまだまだ無駄なモノを買いすぎる。
   海外からみて、まさに世界1の贅沢消費国である。 とくに食生活でそれがいえる。
3) 日本はまだ、例えばスイスなどにおけるような ベンチャー業支援体制がゼロである。
   ここに指摘があるように こういった企業を主体とした構造改革を一気に進め、外国資本をどんどん導入することで、新陳代謝は本格化することが可能である。 政府関係者と異なり、一般国民は、そのような事態に対処できる柔軟性を持っている。
Q: スタグフレーションというのは、景気低迷とインフレーションの併存の状態を示すもの、と定義されていますが、日本の現状はこの点、どのように捉えたらよいのでしょう?
A:内閣府が従来の「景気後退と物価下落がセットになった状態」というデフレ定義の見直しを始めたようです。その背景に有効な景気対策が見出せないことがあることは言うまでもありません。対策論議の混乱を避けるために定義の明確化が必要なことは当然ですが、見直しが更なる混乱に繋がる可能性にも注意しなければなりません。大切なことは物価の方向性と水準を区別し、バランスよく把握することです。

 まず方向性の問題について考えてみましょう。見直しは物価下落をデフレと認識する方向のようですが、その背後には金融緩和を促そうとの意図も見え隠れします。確かに各種の価格指数が低下していることは事実ですが、現状の下落にはバブルの後遺症という要因があることを忘れてはならないでしょう。地価も含めバブルで高くなりすぎた価格からの下落は、ディスインフレと認識すべきであり、デフレとは区別されなければなりません。

 次に、物価水準の問題です。ここ数年の価格低下には、国際化や規制緩和などの要因が混在しています。一頃ほどではないにせよ内外価格差は依然として存在し、国際比較でのわが国の物価はまだまだ高いものが多いのです。この調整は決してデフレとは言えません。

 価格低下は生産者には北風ですが、賃金・給与が上がらなくなった消費者には南風なのです。定義の見直しを、景気不安の真の原因である構造改革を先延ばさせる隠れ蓑にしてはなりません。

鞄結档潟Tーチインターナショナルのホームページ『国際情勢への視点(執筆真野輝彦氏)』によるこんな解説もありますよ。
http://www.triltd.co.jp/index.html(日本の購買力国際比較)
Q: とすると、やるなら今、という感じでしょうか。やるべきことは迷わず敢行する決断力が必要ですね。
A:残念ながら、事件以後、当地でJSTVを拝見するかぎり、先ず小泉氏の発言の重みのなさが非常に気になります。一部マスコミが大げさに報道している’アメリカ一辺倒’で 本人のコンセプトが全然見えてこないのは、非常に不安。 だが、今朝の日曜討論を聞いていると、他の政党はもっと悪い。 日本のアイデンテイテイを一気に作り直す絶好のチャンスであることに、どの政党の党首も気がついていないのは 残念至極なことであります。
そうですよね。政治家は党利党略を捨てて、そして私達はちょっと辛抱して、より暮らしよい世の中になって欲しいものです。今回も、どうもありがとうございました。