-第二回(第一回の補講)-  May 31, 2001

第一回目の講義は如何でしたか。今日はさだやん先生に前回のテーマを更に掘り下げた講義をお願いしましょう。 -第一回-、 -第三回-、-第四回-、-第五回-、 -第六回-、 -第七回-


-ユーロ導入-
Q:前回、来年一月一日から実施されるユーロについて伺いました。スイスはEUに入っていないので、通貨としてもユーロは導入されないわけですが、ヨーロッパの国なので当然他のユーロ参加国同様、ユーロが使えると勘違いしている外国人が多いと聞きました。そのため、商店などは観光客がユーロ紙幣で支払いするケースに対し、それを受けざるを得なくなるそうですね。これは、実際問題スイスにとって大した問題とはなりませんか。
A: 御承知の通り、スイスは 先進国で最も最も資源のない国。それだけに、当初は’血の輸出’ (つまり傭兵の輸出) で国の経済を支えていた、といっても過言ではない、厳しい国です。

この傭兵がせっせと仕送りした金を有効に使う手段として チューリヒを中心に今の銀行組織が発達、他方これとは全く別に、ルイ14世の迫害を受け、命からがらジュラ山脈を越えてジュネーブに亡命してきたフランスの金融業者が設立したのがジュネーブの個人銀行の生立ちです。

前置きが長くなりましたが、昨今のグローバル化で、スイス金融帝国の絶対的優位はかなり落ちたとはいえ、いまだに 通貨量は少ないが堂々と円やドル・ポンドに対抗できる通貨をもっている 世界でも有数の国。 それが、そうカンタンに 主体性ゼロの’首のない化け物’の通貨であるユーロに鞍替えする筈がありません。
それだけに、ユーロが流通始めたときの為に連銀は既に万全の策を立てているし、流通機構も 先ずキャシュレス化現象がここ数年で急速に進むし、どうしても現金の場合は、二本立て価格表示導入、換金システム導入(注:スイスは元々通貨の印刷でも世界一の技術を持っていた伝統から、ありとあらゆる最先端の換金システム技術を持っている)などの手段で、全く問題なしに、この事態を処理するでしょう。

-日本の構造改革-

Q: 前回のお話で、雇用舞台の創設を見事に行い、景気回復に成功したアメリカの例を伺いました。雇用創出、といっても本当に必要ではない雇用を作り出して表向き景気を鼓舞してみても、悪循環ですよね。それはこれまでの公共事業の顛末が如実に語って
いると思います。
小泉政権が断行しようとする改革を水泡に帰さないために、我々国民としては、相当な覚悟を持って「耐え難きを耐え」る以外に方法はないのでしょうか。
A: 公共事業などにこだわっている限り、景気がよくなる訳がありません。良い悪いは別として、米国はIT 革命で膨大な雇用の機会を実現しました。 日本の場合は、規制を全部とっぱらってしまえば、今の何倍かの雇用を創設することができるでしょうが、創設の前に先ず、規制だけで生きてきた金融・建設・流通関連の会社を一旦整理せねばならない、というところが痛いところ。これを避ける方法は 残念ながらないと思います。
そうすると、今まで甘い汁を吸っていた一部の人たちに、これではまずいという自覚を持ってもらって、率先して耐乏生活をお願いしなくてはなりませんね。

これまで構造改革が成功しなかったのは、利権を捨てきれなかった、つまり、みんな自分たちが改革の矢面に立つなんてことは、断じて認めたなかったから、だということでしょうか。
みんなそれぞれ自分の生活があるから、改革は難しいのでしょうね・・・

ありがとうございました。
次回は、携帯電話についてお伺いしたいと思います。