昨年1月22日に産声を上げたZephyrですが、早いもので1周年を迎えます。そこで、Zephyrの各コーナーを担当していただいた方々をお招きして、1周年記念バーチャル座談会を開きたいと思います。そもそもこのサイトを作ったきっかけは日本経済新聞に連載された「教育を問う」でした。そこで問題にされた、この春実施される新学習指導要領の持つ意味の重みでした。文部科学省の進める改革が果たして日本の将来をどのように方向付けるか、反対の声がかなり渦巻く中、いよいよ実際に実施されます。文科省には人々の声が届かないのだろうか、みんな自分たちの子供の将来を案じているならもっと真剣にこの問題が討論されも良いのではないか、そんな思いが駆けめぐります。 本日は、皆さんから日本の将来、世界の流れなど、忌憚のないご意見を伺えたらと思います。まず、ナンデモ*相談コーナーで、いつもほっとさせられるコメントを下さるMエクアさんに、東南アジアで暮らす中で感じる事など伺ってみましょう。 |
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(担当:ナンデモ*相談コーナー) |
欧州諸国の通貨統合などを見ながら、転じてアジアの状況はどうかしらって思います。そして、ニッポンは?と 気になりますね。一般に日本人は、アジアという線引きに自分の国を入れていないのではないかしら?アジアという概念は、東南アジアにすりかわっているような感じがするのね。アジアンテイストなんて、東南アジアの生活雑貨品などがもてはやされていますもの。 そういいながら、わたしもアジアという区分けを明確に説明できないわ。海の中の島国で、国境を共有する国がないということが大きいのでしょうか。地域の中のひとつの国というとらえ方がしにくいですね。 |
ヨーロッパではユーロという共通の通貨がお目見えしましたからね。これは大きな意味があるでしょう。欧州の政治経済に詳しいさだやん先生の目にはどのように映りますか。 | |
(担当:さだやんの経済教室) |
アジアについては 専門外なので詳細には立ち入りませんが、基本的に欧州、という観念と並べてアジアというものを理解することは (まだ)非現実的、ということがいえるでしょう。 |
アジアとヨーロッパ、それはどのような点の違いなのでしょうか。 | |
同じ地続きでも、ハンガリー、フィンランドやバスクのような例外は別として、先ず言語からして関連性があり、'線で繋ぎ合わせられる'歴史的背景を持つ欧州と、極一部の例外を除いて '単なる数多ある点の集合体'であるアジアとは基本的に異なっており、統一という問題に対しても、個々のメンバーの持つ自覚度が丸で違うといえましょう。 欧州にして現在、やっとのことで戦後50年余にして曲がりなりにも統一通貨まで漕ぎ付けたわけですが、いまだにそのヘッド部分は全く見えない、いはばまだ'頭のないバケモノ'です。ましてや、経済圏、という地理的要因以外、まったく共通点のないアジアで、何を対象とするにせよ、統一という概念がまだピンと来ないのは至極当たり前の現象です。 |
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(さだやんの経済教室ゲスト) |
確かにそうですね。Mエクアさんは、アジアという区分けについて明確に説明できないと仰いますが、今後同じ悩みは、ヨーロッパに住んでいる人も感じるようになるかも知れません。ヨーロッパって何? |
私も、このユーロのことだけに限らず、事ある毎に「ヨーロッパって何?」って思います。ニール・ストーンさん、ヨーロッパの悩みを具体的に説明して下さいな。 | |
ユーロは、マーストリヒト条約で合意した通貨統合の基準を満たした11カ国により導入されましたが、去年の1月にはギリシャが参加する等、大欧州実現に向けて大きな一歩を踏み出した象徴です。大欧州にイギリス、デンマーク、スウェーデンが入る以外に、実現のための対話の場となっている欧州協議会へ加盟を申請している国は東欧諸国を含め10以上にも上っています。壮大なロマンといえば、聞こえは良いです。 私は、無謀なロマンにならなければ良いと危惧します。理由は簡単です。スポーツでチームプレーを必要とするものは沢山ありますが、二人で息を合わせるテニスのダブルスでも練習を重ね、コミュニケーションを大切にして、初めてチームとして戦えるのです。ましてや、11人でプレイするサッカー・チームをまとめるのはとても大変で、時間のかかる作業だと思います。真の大欧州を実現させるには、今後、言語や生活文化の違いを克服し、かつ、税制や法律、行政面での協調を必要とします。考えるだけでも気が遠くなります。チームプレイは、誰か一人でも足並みが揃わないと機能しないので、ここは既加盟国の間で確固たる協調を実現させてから、徐々に拡大していってもらいたいものです。大欧州の形成を急ぐあまり、加盟条件を緩和するなどは避けたいものです。それをやるくらいなら、中央欧州、北欧、東欧などと分けて個別に統合する方がまだ現実的か、と思うくらいです。 私はユーロはある程度まで強い通貨(少なくとも対米ドルで、1対1)にはなると思いますが、こうした素朴な不安を感じさせる限り、真の意味で米ドルと肩を並べることは難しいと思います。このように考えると、国境を共有していても、通貨統合が実際に始まっても、ヨーロッパっていつになったら「ヨーロッパ」になるんでしょうね。 |
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アジアの将来という意味では、今年始め、ユーロ騒ぎにかくれて殆ど報道されていませんが、ASEAN (東南アジア経済協力機構)の主要メンバー国、インドネシア・マレーシア・ブルネイ・フィリピン・シンガポール及びタイという、ASEANの96パーセントの貿易量を占めている六カ国間で税率を0〜5パーセントに減少し、AFTA(ASEAN自由貿易圏)形成の第一歩を踏み出したことは評価されていいでしょう。尚且つ、ASEANと中国は 2010年までに共同市場を結成する、との声明をも発表しております。 尚、ASEAN最貧国であるカンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマーについても、2006までにはAFTAに追従する予定で、通貨もベトナムを除いてシンガポール・ドルにリンクさせる計画のようです。 | |
アジアも前向きに頑張ってるんですね。これに対する日本の位置づけはどうなってるのでしょう? | |
周知の通り、いま日本はそれどころの騒ぎではなく、もっか急激な円安で、アジア全体の通貨下落旋風に巻き込まれており、外交も全く'不在'という情けない状態。全く場当たり的としかいいようがなく、信頼関係はゼロに近い。一言でいうと、これは社民党の辻元清美議員が日経インタビューのなかで一言だけ、気の利いたことを言っているのですが、'日本は小国でいい。先進国グループから離脱し、質的転換を図るべきだ'というのは なかなか味のある内容だと思いました。 | |
タイに住んでみて、つくづく思うことだけど、近隣諸国の格差以前にまずは、国内格差の是正じゃないかって。タイは、リッチな層は相続税ゼロで、ますますスーパーリッチ、ハイパーリッチになっていく。僅かの割合でも相続税が課されて、それが貧困者層に回せたら、社会が変わるのになぁ。 | |
超リッチ層とこれまた極端な貧困層が当たり前のように共存しているんですね。これはMエクアさんでなくても矛盾を感じそうです。日本はこれまで「三代で財産が無くなる」と言われた相続税率によって、格差の比較的少ない国だったわけですが、それも変わってきそうですね。 | |
(担当:DoubleKyoko 国境を越えておしゃべり) |
それは個人だけでなく、企業についても言えますよ。その高い相続税率の為に中小企業の中には事業を継続できなくなるケースがあり、問題視されています。現在国会で改正に向けて協議中だと思います。多分、今年の大幅な税制改正で見直されると思いますよ。 |
企業からの徴税見直しは大きなインセンティブになるでしょうね。個人の暮らしぶりに関して何か大きな変化は見えますか。 | |
最近気付いたことなんですが、バブル経済の崩壊で不況が長引き、大銀行や大企業が倒産したり、厳しいリストラによる人減らしの結果、新しい格差ができました。リストラ格差とでも呼びましょうか。 高学歴の中高年のサラリーマンの間で顕著な傾向ですが、課長とか部長の要職についていた人達が離職し、次の職がなかなか見つからない為に、住宅ローンを抱え、経済的に困窮している層が生まれています。 不況の中でも、高価な輸入ブランド品がとぶように売れ、1万円以上もする高いコンサートや劇場の切符が入手困難な位売れ、テロ以前は海外旅行にでかける日本人は減らず、テロ以降は海外旅行をキャンセルした客で一泊4万円もする旅館がいっぱいになり、イギリスの新聞にゴールデンリセッションなんて書かれている中で、退職してから3年位経っても仕事が見つからず、退職金も残り少なくなり、子供の学費が払えず困っている人達の層ができているのです。これは新しい日本の現象だと思います。40才以上の高学歴の人達は、こういう事態を予想すらしなかった人達がほとんどで、精神的にも立ち直れない人もいるようです。女性のパート労働者が増えているのも、こういう情況の裏返しという面があるかもしれません。 |
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インドネシア、マレーシア、フィリピンはどうかしら?いずれにせよ、豊かな層はますます豊かになれる仕組みになっていそうですよね。そんなお国柄を考えると、共通の利益のために、痛みを受け入れる(?)地域の統合は、まだまだ論ずる次元に程遠い? まず、先進国にならなければ土台無理?先進国諸国の善意の支援を待っているだけではね。善意のうしろに、思惑があることを知らなければ。 自分のところでも、甲斐性だしてくれないかなって、思いますね。 |
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Mエクアさんは実際の暮らしの中で「甲斐性なし」(?)だなって思うわけですね。それは国民一人一人の問題?それとも為政者レベルの問題なのかな。私は、「甲斐性なし」を日本人の、自分も含めて、一人一人の中に見てしまうんですよね。何事も最後まで自分自身が責任を負う、という意識ってあまりないんじゃないかな。 |
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私がタイで なんとか考えたら、と思うのは為政者、そしてハイパーリッチな層の人達に対してです。よその国の援助を期待しないでも、富を分け与えることで、自分達の手で国全体のレベルをあげる力があるのに、と思ってしまうんです。国民一人一人に、甲斐性云々自問自答できるほど、とりわけ、ひずみの中で暮らす人々にはいろんな意味の環境が整えられていないと思います。いい意味、良くない意味両面の"マイペンライ"が、穏やかな国民性を表わしますが豊かな層の人がいう、マイペンライは冷たく、底辺を生きる人がいう、マイペンライは自嘲気味に聞こえます。 バグママが言うように、一人、一人の中に甲斐性あるなしを見られる国っていうのは、すでに一応の成熟度に到達している国と言えるのではないかしら? |
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タイとかフィリピン、そしてメキシコなどの貧富の差が激しい中南米の国々に共通していることは、貧しい人達が豊かになるチャンスを意図的に与えないようにしていることですね。一番大切なことは教育だと思います。最低10年間位の義務教育制度を作ったら、時間はかかりますけど、必ず良くなると思いますね。各々の国で、豊かな層からリーダーがでてきてそういう方向に変えられるといいのですが、もし、それが期待できないのだったら、日本が貧困層に教育を浸透させることを援助のセットとして提供すればいいと思うのですが、如何なもんでしょうか?もし、日本がアジアで教育面でリーダーシップがとれれば、長い目でみて、お互いにメリットのある密接な経済関係構築に役に立つと思うのですが。 | |
恭子さん、それは面白いアイデアですね。貧しい国にボランティアで学校を作った日本人の例もありました。教育はやはり重要、何を置いても教育は国家百年の計でしっかり取り組まなければなりませ〜ん!日本もこのままでは教育格差が広がっていっちゃう、と、ついつい、バグママのいつもの主張に結びつけてしまいました。 | |
話が前後します。やっぱり、今のままでは日本は東アジアのお仲間、韓国、台湾 あたりとも、ましてや東南アジア諸国とも 経済統合しても一利もないでしょう。かといって、世界の孤児になってしまっては大変。 | |
そうですね。経済統合を今すぐ実現することは無理でしょうが、そういうことも睨んでアジアの国々と強調しながら世界に向けてリーダーシップをとって行く道を考えていかなければならないでしょうね。東南アジア諸国もそれを期待しているでしょうし、そうすることで世界の孤児になることを避けることにもなるでしょう。 皆さん、本日は本当にありがとうございました。 (Jan. 22, 2002) |