Kumiko’s EYE ‐1‐ 

Kumikoさんは6年半のオランダ暮らしの後、ご主人の転勤で日本に戻りました。
元の古巣に帰ったとはいえ、すっかりオランダ暮らしが板についてしまったKumikoさんの目に、日本はどんな国に写ったのでしょう

01 May 2002 kumikoさん、とうとう日本での暮らしが始まりましたね
Kumiko 私の方は引き上げた時の荷物を空いた部屋に積み上げた状態で、何だか落ち着いてしまいそうです。

この間S市のYさんのお宅へ行ってまいりました。
畑も案内してもらいました。
お二人のS市を楽しんでいらっしゃる様子がとっても良く分かりました。
素晴らしい所でした。
先週の週末から二泊三日で友人の別荘のある草津ヘ行って、またまた感動しました。
大きな温泉のある別荘で、美しい景色を楽しみながら24時間温泉につかることが出来、心も洗われる思いでした。 
標高が高いだけあって、一足遅れたオランダを思わせるような春を味わってきました。
行った時はちょうど桜の花が満開で、ソメイヨシノは勿論のこと、山桜・八重桜・枝垂桜などの桜だけでなくあらゆる木々の花や草花が一斉に咲いていて、それはそれは見事でした。
新緑の山々の美しさはやはり日本ならではだと思いました。
帰りは主人の友達の運転で草津白根の火口から湿地帯や渓谷を楽しみながらのドライブ。
榛名湖の辺で昼食。
わかさぎの天ぷらで皆ビールで乾杯!
とろろそば・山菜そば・天ぷらそばなど食べてから再び車で東京に向かって出発。
東京近郊に近づくにつれ、車も人も町並みも多くなり、夢から覚めた思いでガッカリ!
昨日今日と主人は泊りがけのゴルフ。
日本ヘ帰ってから主人は毎晩のように歓迎会や送別会、久しぶりの友人たちとの飲み会などで忙しく楽しんでいます。
これが未だに日本の現実で、すっかり日本の夫婦の形に戻っています。

確かに日本の中は不況だとは言え、平和です。
世界の国々の問題を、自分たちとはまるで関係ない事として関心を持たない人が多いのは、この小さな国の中である程度満足でき、平和であるからなのでしょうか。
日本の国会議員のやっていること、考えていることは、あまりにもチッポケ過ぎます。
時間の無駄・お金の無駄があまりにも多過ぎます。
私もすっかり染まってしまったのではないかと心配です。

日本の美しい景色や美味しい食べ物に満喫しているのですから・・・
19 May 2002
Kumiko
あっという間に一ヶ月半も経ってしまっていました。
我が家の窓から見える景色と言えば沢山の建物がゴチャゴチャとひしめき合っているだけでオランダの時とはおお違い、目覚めからして気分はすっきりしません。
車や人々の声が常に身近に聞こえ、あの下品な大型カラスの鳴き声が耳にこびりつき、家の中も未だ住みかのないダンボールたちが所狭しと山積みされ、これでは人間らしい落ち着いた生活は到底望むことは出来そうにありません。

昨日一昨日と帰国後2度目のG市にいる主人の叔母の所へ行ってまいりました。
病院に入院している叔母の用事といろいろ昔話など聞くことが目的ですが。
行き帰りの東京・名古屋の新幹線の中がホッと出来る自分の時間だということが分かったのです。
久しぶりに読書なんかしてとてもゆったりとした気分になれました。
名鉄からののどかな田園風景も、規模は小さいながら今の私にはなかなか新鮮に思え、これから定期的に行くことが楽しみとなりました。

日常は久しぶりの方々からのお誘いが、毎週連日埋まるくらいの忙しさ。
有り難いことだと思いながらも、美味しいものが氾濫していることで外食続きは肥満気味の私たちには拍車がかかり困っています。
そんな訳で太り気味の私たちは、”折りたたみ自転車が9800円!”につられて渋谷へ行き、買った自転車に乗って人ごみの中をやっとの思いで帰って来ました。そして今はときどきサイクリングなどしたり、ウォーキングしたりして健康的に楽しんでいます。
この間は自宅から私の実家のあるU町まで1時間40分かけて行って来ました。
行きはよいよい!帰りは辛い!・・・で、ちょうど来ていた私の弟の車に自転車二台を乗せて旗の台まで送ってもらい、そこから1時間のサイクリングでやっと帰って来ました。
年齢のせいか体力維持の方が先行して、日本をじっくり見つめるゆとりはなかなかできませんが・・・
22 May 2002 その後、いかがですか。落ち着きましたか?
Kumiko 相変わらず慌しく、いまだに根無草気分なんですよ。
主人と二人であちらこちらへフラフラと出かけ回っています。
その度に主人と”こういう面ではやはり日本はやり易いね!”とか”ここは日本の遅れているところね!”なんて言いながら楽しむようにしています。
今一番気になっているのは日本の政治家たちの質の悪さと、教育者たちの考え方、そして子供達の環境。
ひとりひとりは皆良い人たちなのに、考える事の範囲があまりにも狭いと思うの。
日本の将来、世界の問題が一部の人達のなかでしか関心を持たれない。
このところ国会中継を良く見ているのですが、何ともしまりがなく緊張感のかけらすらない。
本題からはずれたことでの議論の時間が多すぎて、とても世界レベルにはほど遠い...
あんなこんなで野次馬的に今は面白く見ています。
28 May 2002 「一時帰国で見た日本」を載せました。私の場合はわずか2週間ほどの帰国でしたが、本帰国した人の目に写る日本はまた違うのでしょうか
Kumiko 大変興味深く読ませていただきました。
そしてともすると毎日の慌しさに流されてしまいがちでいる私に、立ち止まって考えるチャンスを与えてくれました。
帰国後、確かに毎日が走るように過ぎ去っていきます。
外から見ていた6年半!今この日本での生活が始まり、物珍しさも手伝って毎日精力的に人に会い、色々見て周り、体験している日々です。
そんな中で一時帰国では味わえなかった見えなかった、一歩入り込んだ姿がみえてきて、またまた興味深く感じることが多々あり、外に出かけるのが面白く楽しいです。

bagumamaさんが感じた人々の顔!
私も帰国後最初に感じたことでした。
不況!不況!と新聞からの印象では、帰ってもあまり居心地の良さを期待できませんでしたが、なんと表面的には少しも暗さは感じられず、とても平和にさえ映りました。
どこへ行っても人!人!人!
昼間も夜もレストランや居酒屋は満員!
とは言ってもこれは渋谷・表参道近辺だけのことなのかは判らないけれど。
少なくとも中心部の辺りにはいつも沢山の人達が絶え間なくやってきています。
ちょっと留守していた間に超高層ビルが続々と立ち並び、一流ブランドの店があちらこちらに進出しているし。
不況なんてどこかへ飛んでいってしまったようです。

昼間のファミリーレストランは幼稚園前くらいの子供を連れたお母さん達がグループで陣取っている。
自分たちの話に夢中で、子供達の行動を見守っている人はいない。
ウエートレスさんたちが、子供達の動きを気にしながらお料理を運んでくる。
食器を下げるときもいやな顔せず、気をつけながら片付けている。
レストランの中を小さな子供達が運動会しているのに、どの母親もそ知らぬ顔で自分たちの世界を楽しんでいる。
レストランの従業員たちも慣れっこになっているのか、”お客様は神様!”と教育されているのか、いやな顔一つしない。
名前を書いて待っているくらい混雑しているレストランで・・・・
別のテーブルで個人で来ていた二組の親子は、席を立つことなく人並の食事光景ではあったけれどが、帰る間際に子供に靴を履かせ、その後椅子の上に靴のまま立たせ、ジャンプする子供に手を貸していたのには呆れました。

若い母親達の非常識な姿にカリカリしていた中で、心和む美しい光景も目にしました。
70代くらいであろうか、老夫婦が仲良く食事に来ていた。口数は少なくともお互いゆったりとした目に見えぬ絆が感じられた。私たちのお腹が落ち着いてきた頃、丁度二人は立ち上がり帰ろうとしていた。男性の方は真っ白な髪がまだ豊かだった。小柄な体がより小さく曲がってはいたが、多少体の不自由そうな奥さんと比べ、自分が面倒を見なくてはと思う気持ちからか、見かけより力強く感じられた。
パーキンソン病なのか小柄な奥さんは、椅子から立つのもままならない。先に立った御主人の手を借りて歩き出したが、小刻みに足を運ぶ奥さんをしっかりとサポートしている姿に思わず感動してしまった。
そしてお二人の姿を最後まで見送ってしまったのだ。
出入り口の椅子に奥さんを座らせて戻ってきた御主人は、奥さんの忘れ物を取りに来たのだった。
それから間のなくして奥さんを迎えにきた時は、レストランの前に車を横付けしたときだった。
時間をかけて助手席に座らせてから、老夫婦の車はゆっくりと走り出したのだった。
誰の手もかりず、出きることはなるべく自分たちでしようとする精神、見習わなくてはと思う。
自転車に乗りながら缶ジュースを飲んでいた少年が、突然車の方へ空き缶を投げつけ、そのまま通りすぎていった。
レストランの若い母親達にしても、この少年のことにしても、やはり注意できずにいた。
主人も”やっぱり出来ないね!”と。
まだ自分が可愛いし、危険をおかしたくないという気持ちが強いからなのであろう。
bagumamaさんがおっしゃるように皆平和な顔している人達がいっぱい!
一人一人いい人達ばかりです。
でも考えが自分のこと自分の子供のこと、家族のこと自分の会社のことくらいまでの人が多いことも確かです。
02 Jun 2002
Kumiko
オランダにいた頃は時々時事問題など真剣な話をしましたね。日本では普通の主婦達が普段真面目に政治や教育問題など語り合い、考える場面にまず出くわすことはありません。
自分の子供のこと、学校や塾の話は、どの母親達も熱心に話している姿は目にしますが。
簡単に言うならば、我日本の人達は人が良くて単純な人達が多い。
物事をあまり深く考えない。
目先の事には敏感!
日本の将来を真剣に考え心配し、訴えている人達がいるのも確かなのだが、人数的にはまだまだ少ないことと、実際に主導権を握って動いている人たちの頭の硬さも目に付いてなりません。
聞く耳を持たないような人たちが中心になることがまず間違いであって、柔軟な頭と信念を持つことは必要に思います。

今一番気になるのは、豊かな時代に育った母親(父親も勿論だが)達の子育てですね。
前にも話しましたが、気になる親子の姿が後をたちません。
殆ど躾をしている姿は見られない。(私立受験のための行儀作法などは別)

昨日は東急多摩川線と東横線に乗っていた20分足らずの中で、幼稚園と小学生ぐらいの子供三人を連れた母親とその母。
先に入ったおばあさんがさっと席を取り、5人が横に一列に座りました。
その後杖をついた足元のおぼつかないおじいさんと多少足取りの軽いおばあさん夫婦が乗ってきましたが、その母親は小さい子供を膝に乗せるでもなし。自分の母親と話をしたり、三人の子供達とふざけ合っている。
またちょっと離れた所にもう一組の母娘が乗っていました。母親の前に小学生の高学年と思われる女の子が立っています。ああこの家は躾をしているのか・・・とホッとしたのも束の間、彼女と娘は交代して娘に座らせてしまったのです。
一体、子供の将来を本当に考えているのだろうか。
いい学校に入れて、そのまま楽に一流大学を卒業させるという将来の考えしかないように思えるのです。
その子が一人の人間としてどう育って欲しいという考えは全く感じられない。いやな思いをさせず、なるべく苦労させず、すんなり育って欲しいと願っている人たちが多く見られる。
昔のように”買ってでも苦労はしろ!”とはどの親も思っていない。
欲しいといえばなんでもすぐに与え、子供に振りまわされている親たちが多い世の中だ。
身分相応、年齢相応、なんて考えていないようだ。
親の子供に対する義務の範囲がずれて来てしまったようだ。
そして人に感謝するというゆとりも失いかけている。
先にお話した客の態度”私はお客よ!”もその現れのような気がする。
皆が皆とはいわないが、そう言った傾向が多く見られるのが心配だ。
という訳で子育てしているお母さん達の心配と頭の堅い連中意外、本質的には日本人って優しくて良い人たち。
表面的には、やっぱり平和な顔と豊かさが感じられる毎日です。
もっと踏み込んで見ないと、なんともひとことでは語れないことは確かですが・・・

29 Jul 2002 Kumikoさん、先日のヨーロッパ旅行の際には我が家に寄ってくださってありがとうございました。3ヶ月ぶりのオランダはいかがでしたか
Kumiko 先日はゆったりしたひとときをありがとうございました。
オランダだとこういう時間がごく自然に取れるのに、日本ではどうして出来ないのか色々考えてみました。
我が家に限ってはまず家の中、近所の環境が雑音も多く騒々しい。家の中も周囲も狭く、ひしめき合って住んでいるのだから仕方ないかも知れないが。
オランダほど規律正しい生活をしている人達が少ないのか、時間に関係なく人の動きが様々なため、24時間いつも人の気配を感じる。
なかなかじっくりと考える環境ではない。
世の中全体が慌しくうごめいているといった感じで、気が多く落ち着きのない人達も多いようだ。
国内に関しては簡単に情報も入り、簡単に踊らされがち。
一人一人じっくり考えるゆとりがないのかもしれない。
色々な情報や環境に振りまわされていると言ったところ。
私自身、帰国後は一人の自分の時間が殆どなくなってしまったことで、オランダにいた頃の充実感のある生活とは縁がなくなってしまった。
だからこの間のようなゆったりとした夕食をさせて頂いたことが、私にとって最高の贅沢だったのです。
本当に有難うございました。

帰国後、毎日30度を越す暑さが続いております。
動けなくてグッタリしています。五十肩も苦痛です。
オランダの夏は最高に気分いいです。
クーラーも使わず、自然の中で暮らせる幸せさ!
友人達との連弾や共演、オランダならではではないでしょうか。
本当に豊かな生活を送っていらっしゃると思います。
日本人に、特に若い人達にこういう豊かさを知って欲しいと思います。
食べ物や身に付けるもの、目先の誤魔化しでない本物の豊かさを・・・