閑中忙あり   [観たり・読んだり・歩いたり] 目次
 観梅・花見  
                       

  師走に入ると、黄や紅に彩られた木々もすっかり葉を落とし、野山は一面茶色の冬景色になる。やがて年が明ける。早くも梅の便りが待たれる。暖冬の所為か、今年の梅の開花は早いようだ。

(二月四日)奈良公園散策。丸窓の梅は一分咲き。しかし今年は花つきが良いようだ。

(二月十二日)西大寺にある喜光寺と菅原神社の盆梅展を観に行く。喜光寺は採算難で今年から中止。菅原神社は手入れも良く今や見ごろ。この地は道実が生まれたところと言うだけあって、梅を大切にしている。

  方向違いであるが、その足で宇治植物公園に向う。梅はほぼ満開。青空に映えて見事。ここの植物園は手入れが良く、年中花が楽しめる。

(二月二十二日)少し早いと思ったが、京都に出かける。二条城の梅は残念ながら五分咲き。時折着物姿の美人が樹下に現れる。京都らしい風景。

  北野天満宮に向う。七分咲き。此処の梅林は手入れが良く、毎年華やかになる。しかしなんと言っても素晴らしいのは境内の梅だ。朱塗りの社殿に映えて一幅の絵になる。さすが天満宮の元祖だけのことはある。

(二月二十五日)富雄の追分梅林に行く。ほぼ満開。今年はいたって花つきがいい。ここの梅林は農家の梅の実を取る為のもの。枝ぶりはよくないがシュートが伸びて、遠目は見映えがする。

(二月二十七日)奈良公園の丸窓に再度挑戦。今度は満開。花つきも良く、鹿も満足げに樹下に集まり、生えたばかりの若草を食んでいる。

(三月一日)久し振りの好天。夕刊には五分と出ていたが、待ちきれず五条の賀名生まで足を延ばす。残念、やっぱり五分。しかし天気は好し、観光客は少なく、楽しく観梅ができた。標高差二百メートルもあろうか、遊歩道に沿って梅の木の下をあえぎながら登っていく。さすが大和随一の梅林といわれるだけあって、山頂からの眺めは抜群。吉野の桜もかくやと思わせる。遠くには山上が岳が望まれ、時には雪がかぶっていることもある。

(三月四日)天気もよし、頃もよし、本命月ヶ瀬梅渓に出かける。これまで幾度か足を運んでいるが、今年は最高。その分人と車で参ってしまった。この梅林は一時手入れが悪く衰えたが、近年復活してきているようだ。しかし車には負ける。

(三月十日)梅のシーズンもほぼ終わり、桜との間に少しブランクができる。浄瑠璃寺に行く。寺の入り口の横にある茶店の庭に、木蓮・彼岸桜・花桃・紅スモモ・サンシュウユ・レンギョウ・・・色とりどりに咲いている。いつも此処に来ると春の到来を実感する。店の主人の丹精。これからも頑張って欲しいものだ。

(三月十三日)伎芸天で有名な秋篠寺に行く。森に囲まれた小寺。こんな時期でも苔が美しい。本堂をバックに白木蓮を撮るカメラマンが集まる。

(三月十五日)春日山の麓に白豪寺という寺がある。五色の椿で有名である。五分咲きと言うところ。五色の花びらが苔の上に散っている。

(三月二十二日)佐保路を歩く。不退寺の雪柳・レンギョウ、法華寺の寒緋桜・レンギョウ、王竜寺の雪柳、それぞれに今を盛りと咲き競っている。

  そうこうするうちに桜のシーズンがやってくる。今年は暖冬、早いといわれたが、寒の戻りで長持ちしている。

(三月二十九日)例年奈良公園のトップ・バッターは氷室神社の枝垂れ。ちょうど見ごろ。朱塗りの社殿に映えて、ながながと枝垂れている。それはいいが、一本の桜に数十人のカメラマン。動きが取れない。空に向けてシャッターを切る。

(三月三十日)少し早いと思ったが醍醐に向う。此処の霊宝館の枝垂れは日本一であろう。毎年枝を広げ大きくなっていく。幸いちょうど見ごろ。以前は三宝院の枝垂れに人が集まったが、今や霊宝館。ゆっくり花見もできなくなってしまった。

(四月三日)我らの花見の定番長谷寺に向う。途中大和文華館に立ち寄る。此処の境内に、三春の滝から種分けしてもらった枝垂れが八本ある。残念ながら散り始めていた。

  長谷寺はボタンで有名になりすぎているが、実は桜がいい.白や黄や緑が入り混じり桜を引き立てている。そしてまた堂宇との調和が素晴らしい。もちろん秋の紅葉も見逃せない。

(四月四日)再び奈良公園に。満開の桜並木のドライブ・ウエイを通って若草山に登る。此処の山桜は見事だがまだ早い。山を降り桜の園に行く。こちらは満開。鹿も花見。新公会堂の庭も満開。訪れる人もなく静かに花見。勿体ない。

(四月五日)例年必ず訪れる竜安寺に行く。残念今年の花は遅い。石庭の塀越しの二本の桜はまだ蕾み固い。桜の園もまだ三分。夕刊は当てにならない。

  さらばと近くの仁和寺に行く。残念、此処も早すぎる。仕方なく岡崎の「エルミタージュ展」を見て帰る。

(四月八日)近くの市大の植物園に行く。此処は桜の種類が多く、花期はまちまちである。お目当ての枝垂れの大木は既に花を落としていた。新緑の中、山つつじも咲いていて満足して帰る。

(四月十日)再び京都に。府立植物園の桜が見ごろ。ほぼ満開。折からの青空に映えて見事。チュウリップを始めとして、色々な草花がところ狭しと咲き競っている。春たけなわの感がする。

  植物園の横は加茂川、その堤の上は半木の道、枝垂れ桜で名高い。此処の枝垂れは京都らしくたおやかである。これが幸い七分、延々と咲いて霞の中に溶け込む。すっかりいい気分になって下賀茂神社まで歩いてしまった。

(四月十二日)朝から青空、思い切って吉野に出かける。電車の五十三分の立ちんぼは辛かった。桜は下、中、上とほぼ咲きそろっている。寒さが続いた所為であろうか。バスを乗り継いで奥の千本まで行き、上、中、下と下る。上からの眺めは絶景。吉野山全山が桜の花で盛り上がって綿菓子のよう。吉野には何度も来ているが、これだけ咲き揃ったのは初めて。帰りは特急が買えてこっくりさん。

(四月十四日)晴天。花見の見納めに生駒山に出掛ける。此処の山桜は全国から集めたもので、一本一本種類が違う。新緑に混ざり合いさまざまな色合いを出し、見る目を楽しませてくれる。人に知られてないので、花見客は少なく、花見の最後を飾るに相応しいコースである。

                 ( 2007.05 )