海外に暮らして
新たな住まいは、上海の振興開発住宅区域の通称“日本人村”と称されるところです。外国人が多く住むところのせいもありましょうが、上海での第一印象は、「予想ほど人間の姿で溢れていないな」ということです。 徐々に行動範囲を広げ、ダウンタウンに出るようになっても、また、郊外へ旅に出ても、その印象が大きく変わることはありませんでした。 ところが・・・ 昨日、うねる様な熱気に、眩暈さえ覚える場所に遭遇しました。上海のダウンタウンにほど近い“上海書城”がその場所です。 書=本、書籍、 書城=大規模な書店 広々とした7階建ての上海書城の各フロアーには、それぞれ夥しい種類の専門書が並びますが、圧倒されたのは、その書籍ではなく、あふれんばかりの人民達の姿でした。 人々はここにこうして集まっていた、とでもいうのだろうか・・ 平日の3時、児童、学生、大人、お年寄、まさしくあらゆる年齢層が、むさぼるように手にした本を読んでいる。 立ったまま・・・手すりにもたれて・・・窓枠に腰掛けて・・果ては床にしゃがみこみ・・ 調べものの参考書としてノートに書き写す大学生、画集をデジカメで写す学生をも目撃。 こうした図書館代わりの利用法もあるのか? 購入する数もかなりのもの。支払いを済ませ、くくってもらった何冊もの本を両腕で抱える人々が、すり抜けるように通り過ぎて行く。その表情の凛と、美しいこと! 閉塞感に包まれた日本が、ますます追い詰められていく、という漠然とした恐怖感に、私は思わず半歩後ずさってしまった。 音を立てるが如くの上海の勢い、それを支える一端は、こうした地鳴りにも似た、人民の向学心にあり、と発見した思いです。 注:価格は、日本ほどは高くありません。一冊の単行本が、基本的な麺一杯のお値段に相当、といったあたりです。 (Mエクア Aug. 23, 2003) Home |