海外に暮らして

ワールドカップとフロリアード 


ワールドカップの話題が巷にあふれている。連日のドラマにテレビから目が離せない。韓国、日本それぞれにホスト国としての誇りと歓びがテレビ画面から伝わってくる。それぞれ最新の技術を駆使して建設された合計20の競技場は、機能性と美しさに加えて両国の色彩感覚や造型感覚の微妙な違いなども感じさせる。テレビ画面に映し出される日本の様子は、設備もきちんとしていれば人々も整然として、そこにはある種の様式美を感じさせる。

一方、オランダでは10年に一度の園芸万国博覧会フロリアードが開催中である。スキポール空港に隣接するハーレマーメアに広大な敷地を確保し8年の歳月をかけて計画されてきた、国を挙げてのプロジェクトだ。4月6日オープンしたこのフロリアード、Feel the Art of Natureと銘打って10月20日まで開かれるが、花や樹、水辺の動植物など自然が相手とあっては、半年間鑑賞に堪える状態に保つのはさぞ難しいことだろうと想像する。実際、私はこれまでに3度足を運んだが、広い会場内は全体的には形になっているものの、個別に見ると何を訴えようとしているのか判然としないものが多く、3度目にして初めて入場料17ユーロと駐車場代7ユーロを払った甲斐があると実感できた。

だが、それは単に移ろいやすい題材だからそうなるのだろうか。3年前、アムステルフェーンのショッピングセンターがオープンしたときもまだ工事中で、人々はドリルの爆音やコンクリートの粒子が舞う、まさに工事現場の中で買い物をしていた。最近華々しくリニューアルオープンしたワールドトレードセンターにしても、まだ全部完成する前のオープニングだった。フロリアードの運営方法にも同様の「やりながら完成させていく」という、言ってみればオランダ方式があるのかもしれない。

マレーシアにいたころ、アメリカ人女性中心のコーラスグループにしばらく在籍し、ミュージカルナンバーを集めたリサイタルというものを体験した。練習中はみな適当で、ぜんぜん本気でやってないように見え、こんなことで大丈夫だろうかと不安になることもしばしばだったが、当日になると全員意気込みがちがい、ジョークのひとつもなく、真剣勝負で本番を向かえ、立派に成功させた。日本にいた頃にもコーラスグループに参加し、リサイタルを経験したが、そのときの練習中に漂う緊張感、一人一人が常にベストを尽くし続けるまじめさと比べると、その違いが面白く、完成度の点では日本式の方が完璧だが、楽しむ点ではアメリカ式に軍配を上げたいと思ったものだ。

いずれにしても、ワールドカップは日本のよさを世界にアピールする絶好の機会になっているのではないだろうか。(June 11, 2002)


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