〜日本の経済問題解決のための8つの提案〜
※プロローグに続いて、銀行の不良債権問題、デフレの問題、財政赤字の問題、採算のとれない有料道路の問題、個人金融資産の還流、高齢者の問題について、具体的な提言を行います。
恭子:9月の初めに日本の4-6月期のGDPが発表されましたが、実質で前期比マイナス0.8%(年率マイナス3.2%);デフレの要素を除いた名目
GNPは年率でマイナス10.3%だったんですよ。そして、景気が改善する兆しは今のところ全く見えないどころか、もっと悪くなっています。その一方、国と地方を合わせた国債等の長期債務残高が約670兆円もあり、その上、旧国鉄や道路公団などの公的機関の負債を合わせると
1000兆円にもなるんですよ。これじゃ更なる財政によるカンフルも期待できないでしょう。ゼロ金利を含めた金融政策も、景気を押し上げるには力不足という感じですね。京子さん、今回はこの問題を話し合ってみましょう。
京子:日本の状況はかなり逼迫しているのですね。
恭子:そうですね。男女を問わず、特に仕事に携わっている多くの人が長引く不景気を身にしみて感じていると思いますよ。転職者は勿論のこと、新卒の大学生も就職がとても大変なんですよ。昔は金の卵といわれた中卒でさえも、仕事が無いんだそうです。大卒の女性なぞ、さっさとあきらめて、アルバイトでお小遣いかせぎでしのいでいるパラサイトシングルが周りにぞろぞろいます。公表されている失業率は5%ですが、この統計に含まれていない実質失業者や失業者予備軍が沢山いるんですよ。
今デフレ経済で暮らしやすい層は年金生活者じゃないかと思います。でもこのシルバー層も、日本の財政赤字が増え続ければ経済的に苦しくなるのは時間の問題です。実際、この10月から介護保険料も割引きがなくなり負担が増えますし、来年からは医療費の個人負担が増えそうです、加えて、年金はインフレスライドだから、デフレスライドも取り入れて引き下げてはという話も聞こえてきます。寿命が伸びる中で、年寄りの不安が高まっています。これが消費不況の一因にもなっています。テレビを見ていると毎日のように「人身事故でXX線が止まっています」というテロップが出ます。不景気に起因する自殺者の数もかなり多いのですよ。治安も日増しに悪くなっていて、日本の安全神話もくずれかけています。人々の心がすさんできているのです。
京子:日本の社会が暮らしやすくなるために、なぜ景気浮揚が大きな命題なのか、肝心の所が実はよく分かりません。人々が幸せな暮らしを営む上で、景気がいいということはそれほど大事なのでしょうか?
主婦としては、あまり景気は関係ないような気がするのです。景気悪くても、そこそこ仕事が出来て、物価も低めに安定して、治安も良く、結局社会に不安が少なければ、暮らしやすいのではないかと想像します。景気悪けりゃ、そんな暮らしありっこない、ということですか? 私には「景気」という言葉から連想されるものがことごとくマイナスイメージなんですね。困ったもんだ。ただ、自殺に関しては、もともと日本の社会には自殺を生み出す温床があるような気がします。だからといって、自殺するところまで追いつめられた人のことを見過ごしには出来ないですが。
恭子:おっしゃりたいことの意味は容易に想像できます。いくら景気が良くても、毎日遅くまで働かされて、休暇もほとんどとれず、外国からはエコノミック アニマルと蔑まれて、そんな暮らしは幸せとは程遠い。全くその通りですね、私も同感です。景気が悪いといっても、それは景気指標の数字だけの問題で普段の生活には直ぐ影響が無い。人を豊かにしたり満足させたりするのは経済成長ではなくて、やりたい事がやれる自由な時間であったり、精神的な充足感だとおっしゃりたいんですね。それは個人個人の価値観の問題で全く正しいと思うし、日本も物質的に豊かになり、そういうことを考えられる余裕ができてきたんだと思います。
私が提言したいのは、日本が豊かな国であり続けるためには、今どうしても改革をやらなくてはいけない。何もしなければ、財政赤字が増えて国債が暴落し、大幅な円安になり、景気が悪いのにインフレになって、深刻な経済状態に陥ると思うのです。貯蓄があっても深刻なインフレになったらいっぺんにふっとんでしまいますよ。
京子:ごもっともだと思います。こんなに赤字を抱えていて、どうしてこれまで政府はこの問題の解決に本気で取り組まなかったのか、単なる問題の先送りだけだったということでしょう? 病巣を根元から断ち切る大手術が必要なわけですよね。
恭子:そう思います。この10年間、不景気が年を追うごとに深刻になってきましたから、財政のカンフルを止めるのが難しかった事情も否めません。ソフトランデイングを目指したから。今は、残念ながらハードランデイングのシナリオしか残されていないかもしれませんね。
京子: 恭子さんは、どういう点で景気が悪いことを実感していますか。
恭子:やはり、仕事が無いことですね。それと、私は、毎週月曜日にでる日経新聞の経済指標とか日銀短観を注意深く見ますが、異常な状態が続いています。個人的には大不況がくるような予感さえします。日銀はもう長いこと超低金利とゼロ金利を続けているのですよ。それでも、デフレが続いている。こんな経済状態、教科書にのっている範囲では見つけられませんよ。要するに過去に経験したことの無い深刻な経済情況ということです。京子さん、海外からみると、日本はどんなふうに見えるのですか?
京子:テレビやラジオでJapanという言葉が聞こえるたびに耳をダンボにして聞くのですが、日本の改革が遅々として進まないことへの諸外国のいらだち、またもや同じ事の繰り返しか、みたいなマイナスイメージと結びつけざるを得ないような報道が目立ちます。こちらサイドのメディアをデフォルトとして聞いている一日本人主婦としましては、なんでこんなに改革が進まないのだろう。官僚体制のせいか、癒着のせいか、はたまた、みんな諦めてるからか。
誰も本当に改革が必要とは思ってないからか、などと考えていました。
恭子:そうですか。そういう事も原因にはなっていると思います。
京子:だけど、世界中で貧困にあえいでいる国がたくさんあることを考えると、まだまだ余裕があるように見えます。時々日本に帰国しますが、そんなに景気が悪いとも感じませんし、高価な有名ブランド品がとぶように売れてるようだし。
恭子:それも、確かに事実ですね。それは、日本人の個人がかなり多くの貯蓄をもっているからだと思います。 一説には個人の金融資産は1200〜1400兆円にのぼると言われています。あともうひとつ、景気を測る尺度はGNPですが、人々が感じる景気は必ずしもGNP値と連動していないからです。私自身は、日本の問題は解決する強い意志があれば必ず出来ると信じています。前回の「参議院選挙とオランダのワークシェアリング」で、自分の頭で考え、判断し、行動することの大切さについて話しましたが、今回、私はすべての問題解決の精神的アプローチとして、
提案1:『前例の無い解決法を積極的に実践する』
ことを提唱したいと思います。それから、地球全体を見渡して、社会資本が充実していて安心して投資できる国はそんなに数多くなく、日本はその数少ない内のひとつですから日本人はもっと自信を持っていいと思うんです。
京子:そうそう、自信持ってないって感じます。そういう心理的不景気というのもあるんでしょうね。
恭子:あると思いますよ。いつもアメリカの目の色をうかがってびくびくしているような。
長引いている不況から脱出する為に、具体的な問題をひとつずつ考えてみましょう。